研究概要 |
当該年度は、前年度に実施した合成段階で問題となった最終産物の溶解性について再考すると共に、糖脂質合成全般に適用可能な合成手法の開発を視野に入れ、目的とするα-ガラクトシルセラミド類縁体の合成に取り組んだ。前年度の合成戦略では、まず糖鎖部分を構築後に脂質部位を導入する戦略をとっていた。しかしながら、より汎用性の高い糖脂質合成を指向した戦略を採用することが今後の研究展開に有用であると判断したため、当該年度では、先に還元末端ガラクトースに脂質部位を導入後、糖鎖を伸長する合成戦略に変更した。また、脂質部位導入の際には、独自の方法を採用し新規性を確保すると共に、より効率的な合成法の開発を目指した。具体的には、アシル基で保護したガラクトース1-ブロモ体とアジドスフィンゴシンからオルソエステルを経由し、脂質部位を導入する手法である。この反応では、糖と脂質の反応点を物理的に近接させることにより、縮合反応の収率向上を期待した。また、ガラクトースの4,6位にDTBS基を導入しておく事でα選択的な縮合反応を期待した。しかしながら、実際の反応ではオルソエステル形成時の収率が54%と予想以上に低く、また、オルソエステルの開裂と同時に起こる縮合反応においても、2位アシル基が脱離した副生成物が生じるなど芳しい結果は得られなかった。そのため、2位アシル基の種類や用いるルイス酸の種類を換えるなどの対策を講じたが満足の行く結果は得られなかった。結果として、新規となるオルソエステルを用いた合成戦略は検討の余地を残す結果となったが、通常の脱離基を使ったグリコシル化反応によってα-ガラクトシル-アジドスフィンゴシンの合成に成功し、そこから糖鎖の伸長にも成功した。今後はスフィンゴシンをセラミドに変換後、脱保護することで目的とするα-ガラクトシルセラミド類縁体の合成完了が見込まれる。
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