研究概要 |
本研究は、低温・中温・耐熱酵素を利用して、15℃前後の低温、37℃の中温、70℃前後の高温と、段階的に温度変化させることでワンバッチ連続糖鎖生産系を構築することを目的とするものである。すなわち、ワンチューブに封入された低温、中温、耐熱酵素を温度を順次上昇させることで順番に活性化させ、連続的に物質を合成するものである。本研究ではその第一段階として「低温→中温」にターゲットを絞り、低温域で活性化される糖転移酵素の作製、およびその利用によって、連続的に単糖を付加することで糖鎖の合成を行うことを目標とした。そのためにはX線結晶構造解析によって低温活性発現能を発揮する「構造要因」を解明する必要がある。そこで当該年度においては、好冷菌Shewanella frigidimarinaに存在する糖転移酵素について、組み換え型酵素を作製するためのクローニングと大量発現系の構築を行った。糖転移酵素の中でも、主要な酵素が存在するglycosyltransferase, group 2 family protein(GT-2)をターゲットとした。 S. frigidimarinaが有する6種類のGT-2をgDNA上に存在する順にH, I, J, K, L, Mと名付け、PCRクローニングおよび組換え型タンパク質の発現を行った。pET-22b、pET-28b等を用いて取得した発現タンパク質は不溶性画分に存在したため、発現条件の検討、可溶化条件の検討を行った。pCold Iを用いてタンパク質の発現を試みたところ、K、Lについてはタグ精製によって組換え型酵素を取得することができた。H、I、J、Mについては封入体として発現し、酵素の取得には至らなかった。今後、可溶性タンパク質として取得した組換え型酵素の立体構造解析によって低温活性発現能を発揮する「構造要因」を解明し、低温機能型酵素を作製する。
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