ピコ秒オーダーの時間飛行近赤外分光法(TOF-NIRS)によって木材の準微視的領域の材質評価を非破壊で行うことを試み、これを実現する計測システムの確立を研究目的として、基礎実験を行った。当初は、成熟材、未成熟材、木材の心材部、辺材部およびあて材部の透過光プロフィルを計測する予定であったが、測定に適した木材(試料厚さが一定等の条件)を調達することが困難であったため、測定項目を変更し研究を遂行した。測定対象を、広葉樹材、針葉樹材など十数種類の材とし、それらの密度を非破壊計測できるか検討した。本測定法は、木材の準微視的領域を超高速パルスレーザで計測する測定系であり、また、木材は異方性素材であるため、安定的な透過光プロフィルを得るためには、測定方法を工夫する必要がある。そこで、今回は一試料につき五カ所計測し平均化することで、得られた透過光プロフィルのばらつきを軽減した。また、透過光プロフィルを解析するために、今回は波形形状から各種パラメータを定義・算出した。パラメータには、減光度(参照光と透過光の強度比)と遅れ時間(参照光と透過光のピーク時間の差)を用い木材密度との関係を詳細に解析した。その結果、木材の密度が増加するにつれ減光度は減少し、また、密度が増加するにつれ遅れ時間は増加する傾向が認められた。さらに、得られた透過光プロフィルから光学特性値である吸収・散乱係数を算出しようと試み、その演算処理をするためのプログラムを開発できた。さらに今後は、このプログラムから光学特性値を算出し、木材中の光伝搬経路をシミュレーションするなどの光学的な理論解析をし、透過光プロフィルの変動が木材組織構造の何に由来するのか解明したい。
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