研究課題/領域番号 |
23880028
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
中尾 元幸 久留米大学, 医学部, 助教 (60610566)
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キーワード | 環境分析 / 環境技術 / バイオ燃料 / リスク評価 |
研究概要 |
バイオディーゼル燃料の原料作物であるジャトロファ(Jatropha curcas、ナンヨウアブラギリ)は、有毒成分を含むことから食用に適さず、「食糧生産との競合」を引き起こさない資源作物として注目を集めている。耕作地確保のために環境を破壊する必要もなく、廃棄物の利用も推進されている。しかしながらジャトロファは有害成分を多く含んでおり、燃料や残渣の生産・流通過程でのヒトへの健康影響が懸念されている。そこで申請者は、ジャトロファに含まれる有害成分について、単離・精製法及び簡易測定法を確立し、その手法を用いて栽培から流通までの過程でのヒト及び環境に対する影響評価を行い、より安全にジャトロファを活用するためのガイドラインの作成を提案すると共に、炭素循環型社会の推進への貢献を目的とした。 まずジャトロファの有毒成分であるホルボールエステル(PE)類の検出と大量精製の系を確立した。本実験ではバイオディーゼルの原料となる種子から、有機溶媒による抽出とHPLCによってPE類を単離し、LC-MS、NMRにより構造を確認した。これにより、以後の実験に用いるために不可欠なジャトロファの主要な有毒成分の標準品を大量に得ることが可能となった。 次に、ジャトロファ由来PE類の発がん性、および毒性について評価した。in vivo実験としては、種子より単離したPEを、背面を除毛したマウスの皮膚に塗布し、発がんプロモーション活性について検討した、また、in vitro実験としては培養細胞を用いた形質転換試験(コロニー形成試験)を行った。この実験により、ジャトロファ由来PE類の毒性発現機序の解明に向けての有用なデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に行うとしていたジャトロファ由来PE類の単離・精製については手法を確立した。また、分取したPEを用いた動物実験も数度に渡って行い、ある程度の結果を得ている。また、in vitro実験については、予備実験の段階ではあるが、手法としては確立されている。以上のことから本実験はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きジャトロファ由来PE類の毒性評価をin vivo、in vitroで行うと共に、ジャトロファからのバイオディーゼル生産の際の副産物の毒性を評価する。すなわち、そこに含まれるPE類の定量を行う。HPLCを用いた方法は既に確立したが、大量の溶媒を用いるなど、抽出操作が煩雑であるため、より簡便で、ハイスループットな方法を検討する。そのために、ジャトロファ由来PE類に対する抗体を作製し、EHSA法によってPE類を定量する測定系を確立する。これにより、ジャトロファからのバイオディーゼル生産が行われる発展途上国等への技術移転を容易に行うことを目指す。
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