研究概要 |
本研究では、樹木の木部二次壁のセルロースミクロフィブリル(MF)配向を制御する細胞内分子機構を明らかにすることを最終目標として、MFの合成と配向に密接に関与する細胞骨格(表層微小管)、タンパク質(セルロース合成酵素)、細胞膜上の構造体(細胞膜マイクロドメイン)の細胞内挙動と相互動態を詳細に解析することを第一目標としている。本年度は、表層微小管をライブイメージングするためのポプラ形質転換体の作出を行った。表層微小管のマーカータンパク質として、シロイヌナズナ由来のα-Tubulin(TUA)、β-Tubulin(TUB)及びEnd-binding 1(EB1)をターゲットとし、蛍光タンパク質(GFP、またはmCherry)を融合したキメラ遺伝子を構築した。構築した融合遺伝子を恒常発現用プロモーター(CaMV35S)の下流に連結し、バイナリーベクターに導入した。本年度、構築した遺伝子コンストラクトは、35S::GFP-TUA,35S::GFP-TUB,35S::EB1-GFP及び35S::EB1-mCherryの4種類である。これらのコンストラクトをアグロバクテリウム法により交雑ポプラ(Populus trernula×Populus tremuloides)に導入した。各々のコンストラクトにつき40~50形質転換体を作出し、共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞観察により表層微小管がGFPまたはmCherryにより可視化できることを確認した。また、標識するマーカータンパク質の違いにより、GFPの蛍光強度が異なることが示唆された。今後、形質転換体の個体再生とライン選択を行い、二次壁堆積中の表層微小管の伸長方向性、微小管構成タンパク質のターンオーバー、微小管の時系列的変化を顕微鏡観察により解析していく予定である。
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