信頼性の高い作況予測を実現するためには、気候条件と作物収量との関係が強く、かつ収量を制約する気候要因の予測可能性が高いことが条件となる。本研究「季節予報を用いた作物収量変動の予測可能性と予測制約要因の解明」では、主要な4作物(トウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギ)を対象に、収量を制約する気候要因と、気候と収量との関係の強さ、収量を制約する気候要因の季節予報による予測可能性を全球で評価した。その結果に基づき、生育期間中盤における作況予測の可能性を4つに区分した。すなわち、(1)可能性が高い、(2)季節予報の信頼性が低く、作況予測の可能性が制約されている、(3)季節予報の信頼性が低く、かつ気候と収量の関係が弱く、作況予測の可能性が現時点ではない、(4)気候と収量の関係が弱く、作況予測の可能性が制約されている、である。 解析の結果、世界生産量の24-38%を生産する地域では強い(統計的に有意な)気候と収量の関係が得られた。トウモロコシとダイズの世界生産量のうち、51-59%は土壌水分量により強く規定される地域で生産されており、コメとコムギは世界生産量の47-53%が気温により強く規定される地域で生産されていることが示された。気温の予測可能性は土壌水分量のそれよりも高いため、収量が気温により強く規定され、気温の予測可能性が高い地域で作況予測の可能性は高い。トウモロコシとダイズの作況予測の可能性を上げるためには、北緯30-50°の7-10月と南緯30-40°の2-4月の土壌水分量の予測可能性を向上する必要がある。一方、コメとコムギの作況の予測可能性を向上するためには、北緯20-60°の3-8月の気温の予測可能性を向上することが必要である。 本研究で示された作況の予測可能性の評価により、対象とする地域・作物の作況の予測可能性を向上するための研究の方向性について、示唆を得ることが可能である。
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