感染性RSV粒子の再構築を目指し,大腸菌で発現し精製したRSVヌクレオキャプシドタンパク質がRNAと適切に結合する条件を検討した.精製ヌクレオキャプシドタンパク質の大部分は大腸菌由来のRNAと結合していたが,ゲル濾過クロマトグラフィーによってRNAと結合したヌクレオキャプシドタンパク質と結合していないものを分取することができた.大腸菌由来のRNAと結合していないヌクレオキャプシドタンパク質は,適切な温度・バッファー条件下でRNAと結合させると,沈降係数の大きなRNPを形成した. また,前年度からの課題であったRSV RNAポリメラーゼの大量発現に,出芽酵母を利用することにより成功した.この精製RNAポリメラーゼを用いて反応条件を詳細に検討したところ,鋳型特異的なRNAポリメラーゼ活性を検出することができた.しかし,RNAポリメラーゼ活性は数十塩基までの短い鋳型を用いたときにのみ検出され,数千塩基からなるゲノム全長を複製するには至らなかった. 本研究の目標であったRSVの遺伝子操作実験系の確立には至らなかったものの,RSV粒子の構成因子を活性を有する形で得ることができたことは大きな進展であり,今後の研究に向けた基盤を構築することができたと考える.
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