研究概要 |
1)癌には熱感受性があるためリズム振動している大腸癌細胞株、DBP-1uc:HCT116への温度の効果を調べた。癌の温熱療法の標準温度が43℃であるため、血清刺激後発光リズムをモニタリング(37℃、5%CO2条件下)している細胞に対し血清刺激38時間後(発光リズムの最低値に相当)から6時間おきに4点(38、44、50、56h)、1時間43℃の熱パルスを与えた。全ての点においてコントロールに対して(37℃1h)過熱後約4時間をピークとする急性の発光値の上昇が見られた。発光の上昇の程度には時刻依存性が見られ(38h<44h,50h;44h,50h>56h)、HCT116細胞に熱感受性の日内変動がある可能性が示唆された。このとき同時に熱が時計の位相をシフトさせる大きさを評価したが56hの熱パルスが約1時間時計位相を後退させる以外は有意な位相変化は見られなかった。このことは生体内においてもある種の癌ではホストの時計の位相変化の影響を受けにくい可能性を示唆している。 2)概日リズムに加えて、細胞の低酸素をモニタリングする目的で時計遺伝子Dec1の低酸素反応部位(HRE)にTKプロモーター、GFPをつないだコンストラクトを作製しそれを導入したステーブルセルラインを作製した。この細胞をpoly-HEMA(細胞接着阻止剤)コートした培養皿上で培養、スフェロイドを作製しその球体に形成される酸素勾配を用いて低酸素への反応を評価した。スフェロイドが成長するに従い中心の細胞が低酸素環境となるが、この細胞で作製したスフェロイドでは中心にGFPの蛍光が見られるようになった。この結果は作製したセルラインは低酸素をモニターできることを示唆しており、最終的にはこのセルラインを免疫不全マウスに移植しXenograftとしてIn vivoでの評価を行う。
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