本研究では、シアル酸受容体ファミリー蛋白のひとつであるSiglec-15がDAP12と会合する免疫受容体として機能し、破骨細胞の分化及び細胞骨格形成に関与することを明らかにした.Siglec-15-/-マウスの成長,発育は野生型マウス(WT)と同等であったが、DAP12欠損マウスと類似した軽度の大理石骨病様の表現型を呈した.Siglec-15欠損マウスでは破骨細胞の分化あるいは機能不全が示唆されたが,骨組織中にはTRAP陽性の破骨細胞が多数認められた。しかし、詳細に観察するとSiglec-15-/-マウスのTRAP陽性細胞は単核のものが多く、多核化した破骨細胞もWTと比較して小さな形態を呈していた。WT骨髄マクロファージ(BMM)をM-CSFとRANKL存在下に培養し、Siglec-15の発現を確認すると、Siglec-15はRANKL刺激後3日、すなわち破骨細胞への最終分化段階で強く発現した.Siglec-15-/-マウス由来のBMMは、M-CSFとRANKL存在下で培養しても多核細胞を殆ど形成せず、わずかに形成された多核破骨細胞においてもActin ringを形成することができなかった。レトロウイルスベクターを用いて、Siglec-15を強制発現させると多核破骨細胞の形成能が回復したが、DAP12と会合できないようにしたSiglec-15変異蛋白を強制発現させても多核破骨細胞の形成能は回復しなかったことから、Siglec-15はDAP12を介して破骨細胞の分化を調節していると考えられたことが示された。LPSによる炎症性骨破壊モデルではSiglec-15-/-マウスでも多数の破骨細胞が誘導され,骨吸収に大きな差は認められなかったことから,炎症による破骨細胞誘導においてはSiglec-15の代償経路が存在すると考えられた.
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