本研究は、新規のヒト多能性幹細胞 Muse 細胞の生体内における動態解析および発生学的起源の同定を目的として行った。しかしながら、現在同定されているMuse細胞のマーカーであるSSEA-3は糖脂質であり、これをコードする遺伝子は存在しない。本研究を遂行するに当たってはトランスジェニックマウスの作製が必要となるため、本年度は引き続き遺伝子マーカーの探索を試みた。 次世代シークエンス解析やマイクロアレイの結果から絞り込んだマーカー候補について FACS を用いて実際に sorting を行い、 Muse 細胞の持つ特徴の一つである浮遊培養状態でのクラスター形成能の評価を行った結果、数種類の最終候補を得ることに成功した。このうち、1つのマーカー候補に関しては、従来のマーカーであるSSEA-3とのdouble positive細胞が形成するクラスターのサイズが著しく大きくなるなどの特徴を有していることを明らかにした。 また、この結果を得る過程で、クラスター形成時の浮遊培養は従来のpoly-HEMAコーティングを施したプレートを用いるよりもhanging drop法のほうが良いことや、物理的に弱いマウスのMuse細胞を単離する際には、細胞に与えるダメージが大きくなりがちなFACSを用いるよりも、磁力を利用して分離を行うMACSのほうがダメージが少なくて済み、結果としてその後の生存率などの点において優れていることなどを明らかにした。
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