研究課題
これまでに私たちは大部分の記憶CD4T細胞が骨髄に定着しており、高い反応性を保持したまま維持されていることを見出してきた。記憶CD4T細胞の多くがCD69を発現している事からCD69遺伝子欠損マウスを用いてCD69分子の機能と記憶ヘルパーT細胞形成における役割について解析を行った。まず、CD69分子が記憶ヘルパーT細胞形成のどの段階で関与するのかについて解析を行った。CD69遺伝子欠損マウスではエフェクターヘルパーT細胞の分化や増殖が正常に起こり、血中に存在するCD69遺伝子欠損エフェクターヘルパーT細胞の数も正常であるにもかかわらず、骨髄中に形成されるCD69遺伝子欠損記憶ヘルパーT細胞の数が顕著に減少した。このことから、エフェクターヘルパーT細胞の骨髄への移入について着目した。CD69遺伝子欠損エフェクターヘルパーT細胞を用いて骨髄への移行能について解析したところ野生型エフェクターヘルパーT細胞に比べて顕著に骨髄への移行能が低下する事がわかった。CD69分子はエフェクターヘルパーT細胞の骨髄への移行に必要な機能分子である事が明らかとなった。次に、CD69特異的抗体処理により抗原特異的エフェクターヘルパーT細胞の骨髄への移入が阻害されることを明らかにしていることから、それらの細胞の局在について解析したところ、CD69特異的抗体で処理した細胞はLaminin陽性細胞との接着が顕著に阻害される事が明らかとなった。また、われわれは既にCD69-GFPノックインマウスを作製済みで、生体内でのCD69陽性細胞の局在を免疫染色法を用いて解析した。その結果、骨髄中のCD69陽性細胞は陰性細胞と比べて顕著にLaminin陽性細胞と接着しているものの割合が高いことがわかった。これらのことから、Laminin陽性細胞上において、未だ同定されていないCD69リガンドの存在が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
CD69分子が記憶ヘルパーT細胞の形成に必須であることを明らかにしたのみならず、CD69分子が記憶ヘルパーT細胞の骨髄への移行に必須な機能分子であることを明らかにした点でおおいに進展しているものと考えられる。また、CD69分子のリガンドは未だ同定されておらず、CD69分子の機能を完全に解明するためにはその同定が必要不可欠であると考えられる。CD69分子のリガンドがLaminin陽性細胞上に存在することを示唆したことは、その同定に大きく貢献するものと考えられる。
CD69遺伝子欠損マウスの表現型を解析したことにより、このマウスがメモリーCD4T細胞を特異的に欠損するマウスとして世界で初めて発見されたことになる。このマウスを用いることで、メモリーCD4T細胞の従来予想された役割を証明するだけでなく、予想されていた以外のメモリーCD4T細胞の新しい役割の解明にも繋がると考えている。
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