研究概要 |
前年度までに見出した、ボランによるカルボン酸の活性化をさらに推し進めることができた。具体的にはカルボン酸を求核剤とし、アルデヒドを求電子剤としたアルドール反応に焦点を絞り、その基質適用範囲の拡大、及び立体選択性の向上を行った。カルボン酸の基質適用範囲はα,α‐2置換のカルボン酸を用いても中程度の収率で反応が進行し、4級炭素の構築にも成功した。また、分子内にエステル部位を有する基質を用いても、カルボン酸選択的に活性化を行うことができ、所期の目標通り、複雑な化合物合成を行う際にも選択的な活性化が達成しうることを示すことができた。求電子剤であるアルデヒドは芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒドともに反応は良好に進行するものの、α分枝型のアルデヒドを用いると反応性の大きな低下がみられる。反応性の改善という点では、今後α分枝型のアルデヒドの利用に焦点を絞って検討を行う予定である。また、当初は求核剤となるカルボン酸を3当量用いることで高い収率を達成していたが、αプロトンを持たないダミーのカルボン酸を用いることで求核剤となるカルボン酸を1当量に抑えても十分反応が進行することを見出した。さらに、このダミーのカルボン酸としてアミノ酸誘導体を用いたところ、高いsyn選択性が発現することが分かった。アミノ酸は不斉点を有することから、生成物の不斉収率を測定したところ、23%eeと低い選択性ながら不斉誘起が観測された。初期的知見ながら、塩基の選択によりsyn/antiの逆転が起こることも見出しており、今後は詳細なダミーリガンドの検討によって立体制御を精密に行える条件を検討していきたい。
|