癌転移は癌患者の予後を決定する因子であり癌転移メカニズムの解明および癌転移を阻止する治療法の開発が急務である。癌転移形成において浸潤は最も重要な過程である。本研究では転移および浸潤促進因子であるポドプラニンの浸潤先端部発現機構の解明とその発現の意義について解析した。前年度、子宮頸癌モデルマウスの腫瘍浸潤先端部および腫瘍中心部、正常部組織をレーザーマイクロダイセクションにより採取し、遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析した結果、腫瘍浸潤先端部においてインターフェロン応答遺伝子の発現上昇が見られる事を見いだした。今年度はさらに、扁平上皮癌細胞株を用いた検討によりインターフェロンγによりポドプラニンの発現誘導が認められ、かつポドプラニンの発現誘導はstat1ノックダウンでは認められなかったことから、インターフェロンγによるポドプラニンの発現誘導はstat1を介した経路による事を明らかにした。さらにポドプラニンを内在性に発現するA431細胞株をヌードマウスの皮下へ移植すると浸潤先端部を形成するが、ポドプラニン抗体投与により浸潤先端部の形成が抑制されること、stat1発現をshRNAでノックダウンしたA431細胞株では浸潤先端部の形成が抑制されることを見いだした。本研究の結果からstat1経路を介したポドプラニンの発現亢進が腫瘍浸潤先端部の形成に寄与する事が示唆された。癌細胞周囲の間質からのインターフェロンγにより癌細胞のポドプラニン発現が亢進し、浸潤を先導し浸潤先端部が形成されたと考えられる。ポドプラニン発現や機能を抑制させる事により、浸潤が抑制できる事が示唆され、ポドプラニンを標的とした浸潤阻害薬への応用の可能性が示された。
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