1.ニパウイルス膜タンパク質の細胞内局在の解析 ニパウイルス膜タンパク質G(Glycoprotein)の細胞内での挙動を理解するため、Gと赤色蛍光タンパク質の融合タンパク質(G+RFP)を培養細胞へ発現させ、共焦点蛍光顕微鏡で細胞内局在部位を調べた。複数種類の上皮系細胞で実験を行った結果、G+RFPは細胞内に点在、また核近傍に局在していた。また、細胞を様々な深度で観察した結果、G+RFPの細胞末端での蓄積が見られた。これらの局在部位は、その形状や位置からゴルジ体や小胞体と考えられた。これらの細胞内小器官は一般に糖タンパク質が細胞膜上へ輸送される過程で局在する部位であることから、ニパウイルスGは宿主の糖タンパク質と同様の輸送経路で膜へ移行すると考えられる。 2.ニパウイルス膜タンパク質のアミノ酸変異体を用いた解析 Gはニパウイルスの膜タンパク質Fと共同して細胞膜融合を引き起こすことが知られている。Gの機能と細胞内輸送との関連を調べるため、Gのアミノ酸配列が変化する変異を導入し、Gの局在が変化する変異体を検索した。その結果、細胞膜上への局在が起こらない変異体を見出した。この変異体はFと共発現させた場合の細胞融合活性が低下していた。このことから、細胞膜上へのGの局在はGの機能発現に必要であると示唆された。この変異体の細胞内局在は野生型と同様であったことから、この変異はGが細胞内から細胞膜上へ移行する過程で欠陥を導くと考えられる。
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