高脂肪食の摂取に代表される生活習慣の欧米化と、それに伴う肥満によるインスリン抵抗性の増悪には、脂肪組織へのマクロファージやリンパ球など免疫細胞の浸潤が関わっている事が知られている。過去の研究において、脂肪組織には好中球も浸潤している事、高脂肪食負荷に伴う肥満によって惹起される好中球の脂肪組織への浸潤は、マクロファージの浸潤に時間的に先行する事を明らかにした。好中球の浸潤は、脂肪組織と全身の炎症、インスリン抵抗性に関わる可能性がある。その機序を明らかにするために、好中球の脂肪組織への遊走機構の解明と、浸潤した好中球の遺伝子プロファイルを検討した。 A.Flowcytometry解析を用いて、脂肪組織における好中球数を定量化するシステムを構築した。コラゲネーゼ処理によりマウス精巣上体脂肪を分解し、遠心分離を行い血管間質細胞を採取した。独自の抗体の組み合わせにより8色を用いて染色することにより、明らかな脂肪組織好中球のクラスターを確認することができた。このシステムを用いて、C57BL/6マウスやob/obマウスにおける摂食/絶食/再摂食試験を行い、マウス脂肪組織への好中球の浸潤は、肥満に伴う慢性的な変化のみならず、摂食刺激などにより急性/亜急性の調節を受けている可能性を明らかにした。 B.脂肪組織に浸潤した好中球と、脾臓など他の組織で認められる好中球の遺伝子プロファイルに違いが認められるかどうかを明らかにするために、それぞれの組織からFACSを用いて好中球のソーティングを行った。RNAの抽出を行い、マイクロアレイ解析の準備中である。
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