研究課題/領域番号 |
23890041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 聡子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (40609872)
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キーワード | 分子生物学 / 悪性腫瘍 / がん抑制遺伝子 / がん幹細胞 |
研究概要 |
p63は、p53ファミリーの転写因子であり、癌化や幹細胞の維持に重要であると考えられている。p63にはN端の転写活性「ドメイン(TA)を持つ全長のTAp63とTAを欠くΔNp63のアイソフォームが存在し、TAp63はp53と類似した転写活性を持つ癌抑制因子として働き、逆にΔNp63はTAp63やp53の標的遺伝子のプロモーターとの結合に競合し、発癌因子の性質を持つと考えられている。TAp63とΔNp63には、スプライシングによるC端の違いにより、それぞれ複数のアイソフォームが存在する。慢性骨髄性白血病では、急性転化のときにp63変異の頻度が高くなるという報告もあるが、p63の造血器悪性腫瘍における役割については、明らかにされていない。本研究では、造血器悪性腫瘍細胞における、p63の役割と制御メカニズムを明らかにし、将来的な造血器悪性腫瘍の診断・.治療に役立てることを目的としている。まず、造血器悪性腫瘍の細胞株において、p63の発現を調べたところ、K562細胞では、TAp63とΔNp63の両方の発現をみとめた。さらに、TAp63とΔNp63のそれぞれで、C端も複数のアイソフォームの発現をみとめた。また、その他のいくつかの細胞株でもp63の発現が確認できた。TAp63とΔNp63それぞれの過剰発現による影響を見るため、細胞株に導入し、解析中である。また、p63は正常の上皮で幹細胞の維持に重要であることが示唆されており、特にΔNp63はがん幹細胞の維持にも重要である可能性がある。このため、がん幹細胞分画でのp63の発現を調べると共に、ΔNp63のノックダウンを行うためのコンストラクトを準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験に必要なプラスミドや細胞株等の収隼に予想以上に時間がかかったため。また実験の面では、p63発現株の生存率が悪く、解析が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の他施設への異動に伴い、施設の設備等も研究計画時に予定していたものと異なるものとなった。.異動先の研究室では、主として固形腫瘍のがん幹細胞について研究しているため、予定していた造血器悪性腫瘍の解析を、可能な範囲で行うと同時に、p63の固形腫瘍のがん幹細胞における役割についても、研究範囲を広げて解析していく予定である。
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