研究課題/領域番号 |
23890057
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
青山 典生 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (30611024)
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キーワード | 歯周病 / 大動脈瘤 / マトリックスメタロプロテイナーゼ / Toll様受容体 |
研究概要 |
近年、歯周病と全身疾患とのかかわりが指摘されるようになり、特に歯周病が循環器疾患のリスクとなることが報告されている。循環器疾患のひとつである腹部大動脈瘤は無徴候性に拡張し、破裂すると致死的な結果を招く疾病であり、大動脈瘤病変において炎症の亢進が認められている。さらに、これまで大動脈瘤病変から多数の歯周病原細菌の検出が報告されている。しかしながら、その関連するメカニズムに関してはほとんど調べられていないことから、実験的モデルマウスを用い、歯周病原細菌が腹部大動脈瘤形成に与える影響とその機序を検討することを目的とし、本研究を計画してきた。これまで、腹部大動脈瘤と歯周病との関係を詳細に解明した研究はなく、本研究の意義は大きいと考えられる。 平成23年度における研究の成果として、クラリスロマイシンやドキシサイクリンといった薬剤を用いて、マトリックスメタロプロテイナーゼを制御することにより、腹部大動脈瘤の拡張が抑制できることが明らかとなった。これらの成果は学術集会や雑誌論文で公表してきた。この結果により、歯周病原細菌感染時にはマトリックスメタロプロテイナーゼの発現が上昇することにより、腹部大動脈瘤拡張を招くということが裏付けられた。 また、Toll様受容体(TLR)-2ノックアウトマウスを用いた実験により新たな知見が得られた。TLR-2ノックアウトマウスでは、歯周病原細菌感染時の腹部大動脈拡張が抑制されることが明らかとなり、歯周病原細菌を感知する際でのTLR-2を経由するシグナル伝達の重要性が示唆された。この結果の一部は学術集会において公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画として、野生型マウスおよびTLRノックアウトマウスに対し、主要な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisを感染させる動物実験を進める予定であった。平成23年度中に予定の匹数の実験を行い、サンプルを得ることができた。さらに、薬物による治療介入の実験データも得ることができ、学会や論文による発表も進められたため、計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験は、すでに得られたサンプルから予定通りの解析を行っていく予定である。具体的には、PCR法やELISA法によりマトリックスメタロプロテイナーゼなどの物質の発現量を測定するなどし、メカニズムの解明に向けてアプローチしていきたいと考えている。
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