研究課題/領域番号 |
23890059
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
荒木 保弘 東京工業大学, フロンティア研究機構, 特任助教 (60345254)
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キーワード | 蛋白質 / 細胞 / シグナル伝達 / 脂質 / ストレス / オートファジー / リン酸化 |
研究概要 |
オートファジーは真核生物が普遍的に備える大規模タンパク質分解系で、飢餓を乗り越えるために必須な生存戦略である。オートファジー研究で、自己の細胞質成分を分解コンパートメントに輸送するアティピカルな二重膜構造体"オートファゴソーム"の形成機構の理解は最大の課題である。本研究では、オートファゴソーム形成過程において最も初期に必要であるAtg1キナーゼの相互作用因子並びに基質を同定することにより、オートファゴソーム形成の初期段階の分子基盤とそのリン酸化による制御機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、(1)オートファゴソームの形成の場と考えられているPASの構成因子・構造的特性の解明、(2)オートファジーに必須であるAtg1キナーゼの基質及びそのリン酸化される残基の同定を試みた。(1)PASの構造的基盤と想定されるAtg1キナーゼ複合体相互作用因子を単離し、質量解析により複数同定した。オートファジーとの関連を評価するために、これらの欠失変異体,もしくは条件致死株を作製した。(2)すべてのAtgタンパク質をAtg1欠損酵母株から調製し、活性化Atg1と^<32>P標識されたATPを混合したin vitroキナーゼアッセイにより、リン酸化修飾の有無を検証した。その結果、ホスファチジルイノシトール3リン酸を産出するPI3キナーゼ構成因子がAtg1によりリン酸化されることを見いだした。酵母細胞内でも、この因子は飢餓によるオートファジー誘導と共にリン酸化されており、この修飾がAtg1依存的であることも明らかとなった。in vitroリン酸化標品、飢餓状況下の酵母から精製した候補タンパク質のリン酸化部位を同定し、リン酸化修飾されないアラニンに置換した変異株を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では質量解析が必要不可欠であったが、この点に関して質量分析の専門家である京都大学薬学系研究科石濱泰教授と緊密に連携を取りつつ研究を進めることにより、当初の研究計画通り成果を挙げたと考える。また、これまで大腸菌の発現系や無細胞タンパク質合成系では調製不可能であったAtgタンパク質が、酵母から十分な質・量調製可能であることを見出せたことも順調な研究推進に大きく貢献した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で得られたAtg1キナーゼ複合体相互作用因子、Atg1キナーゼの基質がオートファジーに関与するのか、オートファゴソームの形成にどのように寄与するのかを、特に分子機構を主眼にして研究計画に沿って検証する。また、酵母で得られた知見高等真核生物にも適用可能である予備的知見を得ている。当初の研究計画の遂行に併せて、哺乳動物培養細胞を用いたAtg1キナーゼ複合体の研究を新しく始めた。
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