オートファジーは、タンパク質等の細胞質成分のみならず、オルガネラのような巨大な構造体を丸ごと分解する、真核生物に広く保存されたバルク分解システムである。 Vps34は生体膜リン脂質の一種、ホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3P)を産出するPI3キナーゼである。 Vps34は、オートファジーに寄与するcomplex I(Vps15、Vps34、Atg6、Atg14)と、液胞酵素の輸送に寄与するcomplex II(Vps15、Vps34、Atg6、Vps38)の二つの複合体として存在する。しかし、両複合体が異なる機能を発揮する分子機構は不明であり、構成因子のより詳細な解析は必須である。 オートファゴソーム形成過程において最も初期に必要であるAtg1キナーゼの基質を探索する過程において、質量分析解析によりp25をVps34と免疫沈降で共沈される因子として同定した。このタンパク質はcomplex Iと共沈されるが、complex II特異的因子Vps38とは結合しないこと、飢餓に応答して、オートファゴソーム形成の場であるPASに局在することから、p25はcomplex I特異的構成因子であることが明らかとなった。p25欠失株ではオートファジー活性が低下し、複合体がAtg14/Atg6とVps34/Vps15の二つのサブコンプレックスに解離した。p25はAtg14とVps34/Vps15の両者にそのN末側領域を介して相互作用する。更なる生化学的解析により p25はC末側領域でホモ2量体化すること、この2量体がcomplex I形成に必須であることが判明した。これらの結果はp25の2量体がAtg14/Atg6とVps34/Vps15の間を繋ぎ止める役割を果たしていることを示唆する。
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