研究概要 |
本研究は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序解明を目的とする.我々はALS神経組織におけるTDP-43蛋白の局在変化により生じる機能異常がスプライシング調節因子である,snRNAs の発現低下を来たすという仮説を提唱している.我々は実際にsnRNAsの一種であるU12 snRNAがALS神経組織で低下すること,および非神経組織では低下しないことを逆転写定量PCR法を用いて確認している.同仮説を実証するためにはALS患者組織におけるU12 snRNA依存性スプライシング異常を証明する必要がある.我々は平成24年度にALS神経組織におけるスプライシング異常の定量を実施しており, これを報告する. mRNAのスプライシング異常の定量には逆転写定量PCR法を用い,条件設定は国際的な実験ガイドラインに準じた.我々は複数例のALSおよび対照群の脊髄.大脳皮質運動野より抽出し,品質を確認したRNAを既に保有している.また逆転写定量PCR法の正確な施行に必須である内在性コントロールについても先行実験で選定を終えている.測定対象としてU12 snRNAがスプライシングに関連するタイプのイントロンを有することが報告されている遺伝子として,IPO-4,IFT-80,GARS,CTNNBL のmRNAを選定した.その結果,ALS大脳皮質運動野においてIPO-4 mRNAのスプライシング異常を認めた.また同様の変化をTDP-43発現抑制培養細胞でも確認した.ALSにおけるTDP-43の機能低下とスプライシング異常の関連を支持するものとして重要である.今後の検討課題として,他臓器での同イントロンのスプライシング変化や,U12 snRNAの関連しないイントロンのスプライシング異常について検討する必要がある.
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