本研究は、ヒトの歯槽骨微細骨梁構造と全身の骨代謝状態の関連性を検討し、骨代謝状態をより鋭敏に反映する歯槽骨パラメータを明らかにすることで、歯槽骨を用いて骨粗鬆症を超早期に発見する方法を確立することを目的としている。 “歯槽骨生検法”で得られた試料のマイクロCT画像から、3次元骨形態計測データ(骨量、骨表面積、骨梁幅、骨梁数、骨梁間隙、骨梁中心距離、骨パターンファクター:TBPf、Structure Model Index:SMI)を得ており、本年度はさらに骨塩量計測も行った。また、全身の骨代謝状態の検査として、骨代謝マーカーの骨型アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、血中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド、デオキシピリジノリンを測定した。 歯槽骨パラメータの3群間(閉経前、閉経直後、閉経後)の比較を行い統計学的に分析した。その結果、閉経直後群は閉経前群と比較し骨梁間隙とSMIが有意に高値を示した。よって、全身の骨代謝状態が亢進する閉経直後に、歯槽骨もいち早く海綿骨構造の棒状化や脆弱化といった変化が起こっていることが明らかとなった。 さらに、歯槽骨パラメータと全身の骨代謝マーカーの相関関係を統計学的に検索したところ、全ての歯槽骨パラメータが、少なくとも一つ以上の骨代謝マーカーと有意な相関関係を有し、歯槽骨が全身の骨代謝状態をよく反映していることが明らかとなった。特にSMI、TBPfでは、順位相関係数が0.7以上の強い相関関係が認められ、特に有用な歯槽骨パラメータであることが明らかとなった。 本研究より、ヒト歯槽骨の海綿骨構造が、閉経後早期に変化していること、また全身の骨代謝マーカーの変化と鋭敏に呼応していることが明らかとなった。よって、歯槽骨海綿骨を詳細に検索することで、全身の骨代謝状態を知り、骨粗鬆症発症リスクの高い人の早期発見に寄与する可能性を示すことができた。
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