研究課題/領域番号 |
23890067
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
宇野 恭介 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 助教 (30608774)
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キーワード | 神経疾患 / 精神疾患 / 統合失調症 / エピジェネティック / メチル化 |
研究概要 |
統合失調症は人口の1%が罹患する患者数の多い疾患である。しかし、原因が明確になっておらず、切り札となる治療法も存在しない。現在までに、定型および非定型の治療薬が開発されてきているが、いずれの治療薬が患者にとって奏効があるかどうかは服用してみないとわからないというのが現状である。我が国でも昨年、難治性統合失調症患者に対するクロザピンでの治療が開始されたが、患者個々が難治性か否かを見極めるには、1年以上の歳月をかけて複数の薬を試さざるをえず、その期間の患者や家族の苦悩は非常に大きい。そこで本研究では、精神疾患関連遺伝子として見出している3つの新規分子の発現変動がDNA メチル化に起因すると仮定し、その検証とバイオマーカーとしての臨床応用への可能性について検証することを目的としている。 まず、メタンフェタミンを連続投与した統合失調症モデルマウスおよびコントロールマウス脳内における3つの遺伝子の発現について、定量的PCRにより部位ごとに検証した。その結果Shati,TMEM168のmRNA発現量は、海馬、前頭前皮質、および側坐核において上昇が確認された。さらに詳細に解析する目的で、それぞれのマウス脳の凍結切片を作成し、in situハイブリダイゼーション法や免疫組織化学染色法を用いて検討を行った。さらにエピジェネティックな解析を試みる目的で各脳部位および血中のゲノムDNAを抽出した。まず、血中ゲノムDNAのShatiおよびTMEM168のプロモーター上のメチル化を解析したところ、メタンフェタミン連続投与したマウスにおいて、メチル化の割合が減少していた。これによりメチル化が解除されている可能性が示唆される。今後は各脳部位のメチル化も解析し、血中のメチル化と比較することにより、臨床応用への適応を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in situハイブリダイゼーションや免疫染色などの手法を新たに立ち上げ、脳内におけるshati、TMEM168の発現局在を確認することができた。また、血中ゲノムのメチル化解析にも着手でき有意義な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はさらに様々な脳部位におけるメチル化解析を予定しており、可能ならば統合失調症患者の血液を用いた臨床応用に適応していきたいと考えている。そのため現在、臨床委員会への申請をしているところである。
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