研究概要 |
本研究では、免疫抑制性細胞集団として知られ、担癌状態などで著しく増加することが知られているミエロイド系抑制性細胞(Myeloid derived suppressor cell;以下MDSC)の形質変化を誘導し、口腔扁平上皮癌に対する新たな免疫学的アプローチによる治療法の開発を目的として、シンジェニックのマウス口腔扁平上皮癌モデルを用いて、口腔癌組織におけるMDSCの分布および機能解析と、このMDSCを効果的な抗原提示細胞へと形質変化させる手法の検討を行い、口腔癌に対する新たな免疫ワクチン療法のために応用することが可能かどうか解析を行った。その結果、1.腫瘍組織内のMDSCを含めたCD11b陽性細胞の細胞表面上では、death receptorであるDR5(TRAIL-R2)やFas(CD95)の発現が増強していること。2.腫瘍組織内のTregの細胞表面は、これらのdeath receptor に対するligandであるTRAILやFasLの発現が上昇していること。3.中和抗体を用いた解析で、腫瘍細胞から分離しらTregは、Fas/FasLを介してCD11b陽性細胞のアポトーシスを誘導すること。4.SCCVII担癌マウスに低用量のゲムシタビンを投与した場合、腫瘍組織内では、樹状細胞上のCD80,CD83,CD86,CD40,MHC-classI,MHC-classIIの発現が増強していたこと。5.SCCVII担癌マウスに低用量のゲムシタビンを投与した場合、腫瘍細胞上のT細胞補助的刺激分子や免疫細胞の接着等に係る分子群が増強していたことが確認された。すなわち、口腔癌組織内では、免疫細胞や癌細胞とともにMDSCは、低用量の化学療法剤で形質変化が誘導されることが確認された。
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