研究概要 |
本年度はまず、転移能の異なる骨肉腫細胞を数種類樹立した。ヒト骨肉腫cell line 143Bの核にGFP、細胞質にRFPが発現した2色の蛍光を有する143B-dualが作成済であったため、この143B-dualをヌードマウスの尾静脈に注射し実験肺転移を作成、それを培養細胞株に戻すin vivo細胞継代を行った。そこで樹立したcell lineを143B-LM1とし、このcell lineを用いてin vivo継代を更に繰り返して行い、143B-LM2,143B-LM3,143B-LM4まで樹立した。 次にこれらの肺転移形成能を調べた。それぞれのcell lineを1×10^6個ヌードマウスに尾静注し、2週間後に肺を切除して、肺転移の個数を蛍光顕微鏡を用いて定量化した。またヌードマウスの脛骨に2×10^5個細胞を移植し同所移植モデルを作成。移植4週後に同じように肺を切除して、肺転移の個数を蛍光顕微鏡を用いて定量化した。その結果、in vivo継代の数が増すごとに転移能が上がっていくことを確認した。 今回の結果から、転移能の異なる骨肉腫の細胞株を4種類得ることができた。転移能が上がるに連れて上昇していく分子や蛋白を見つけることで、骨肉腫の肺転移の治療につながっていくと考えている。このcell lineは今回の凝固・線溶因子の実験のみならず、他の因子の解析にも使用することができる。また、これらのcell lineすべてに蛍光蛋白が安定して発現していることも確認しており、転移能の違いによる細胞動態の観察もsingle cellレベルで可能である。 次年度は、本年度の結果に基づいて、ElizaやPCRで各cell lineにおける線溶関連因子の発現をまず確認していく予定である。
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