本研究の目的は、肢体不自由児施設(現医療型障害児入所施設)における被虐待児を対象とした支援システムの在り方を明らかにすることであった。 肢体不自由児施設(現医療型障害児入所施設)において各専門職が、被虐待児にどのような支援を提供しており、その役割遂行にどのような困難感を抱き、他の専門職にどのような期待をもっているかを調査した。加えて、肢体不自由児施設(現医療型障害児入所施設)入所している児の行動特徴について、虐待を受けたこどもの行動チェックリスト(ACBL-R)を用いて調査を行った。 調査は、全国の肢体不自由児施設(現医療型障害児入所施設)のうち同意の得られた18施設に勤務する被虐待児支援に携わった経験のある、医師、看護師、理学療法士、言語療法士、指導員、保育士、薬剤師、検査技師、心理士を対象とした。多くの専門職が困難を感じているのは、提供している支援のうち、特に家族に関する支援であることが明らかになった。特に、家族と連絡を取ること、家族と面接を行うこと、子どもと家族の仲介をすること、家庭療育を行う調整をすること、退所時や就職時の移行時期に家族と調整をすることに困難を感じる職員が多いことが分かった。被虐待養育における家族支援について、施設がもつ課題が存在することが示唆された。また、退所時や就職時には、児自身の準備を行うことにも困難さがあることが示されており、入所施設においては、入所中の療育に限らず、退所や施設移行、地域移行を見越した支援を行っていく必要があることが示唆された。
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