研究概要 |
本実験は、ヒト骨髄間葉系幹細胞(human Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells:hBMMSC)を用いて行った。シャーレ上に播種した細胞が80%以上コンフルエントになった時点で無血清培地に交換し、48時間後に回収した培養上清液(CM)をエタノール沈殿法によりタンパク質成分を沈殿させ、さらに凍結乾燥してパウダー状に処理したものを使用したものを実験に使用した。in vivo実験モデルとしてウサギ頭頂部骨造成モデルにおける骨造成効果を評価した。ニュージーランドホワイトラビットの頭頂部骨膜を除去し骨表面を露出した後、直径6mmの溝を形成した。内部骨面に骨孔を作製した上で、直径6mm、高さ6mmの純チタン円筒をウサギ1個体につき4個設置した。円筒内に足場材料としてβ-TCPを充填した上で各CMパウダーを添加し、次のような実験群を設定した。実験群1:hBMMSC CM,実験群2:hBMMSC CMパウダー,実験群3:無血清培地,対照群:生理食塩水。円筒上面を純チタン製の蓋で被覆し、閉創して終了とした。移植後8週において屠殺し、非脱灰標本を作製、トルイジンブルー染色して、円筒内部骨量を組織形態学的に比較評価した。その結果、hBMMSC CMおよびhBMMSC CMパウダーで有意に骨造成量の増加が認められた。また、hBMMSC CMパウダーはhBMMSC CMと比較しても80%程度の骨造成効果を呈することが明らかになった。このことから、幹細胞由来の培養上清液から抽出したタンパク質粉末が、骨造成に有用な新たな材料となりうる可能性が示唆された。生細胞を含まない幹細胞由来タンパク質画分のみを用いることで、安全、簡便、低価格での組織再生医療が実現できる可能性があり、細胞を用いた再生医療の実用化および産業化に向けた新たな方向性が見いだされた。
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