研究課題/領域番号 |
23890083
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
藤川 裕之 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (40616091)
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キーワード | 大腸癌 / 臓器特異性転移 / メチル化 / micro RNA / 遺伝子発現 |
研究概要 |
癌の転移において、癌細胞原発巣からの癌細胞の遊離、転移先での接着・増殖・血管新生の各過程に多数の促進・抑制因子が関与する。これには癌細胞側の制御因子だけでなく、転移臓器に癌細胞の臓器選択性と親和性を規定する因子群が想定されるが未解明な部分が多い。そこで本研究は大腸癌の臓器特異性転移、とりわけ肺転移のメカニズムを解明するために、癌の形質変換に関与する可能性がある遺伝子を解析し、さらにはその遺伝子発現を調節するDNAメチル化と、miRNAの解析を加えることで、大腸癌の新規治療に結びつけることを最終目標とした。本年度は、大腸癌にて当院で切除された摘出標本約100例から大腸癌組織と正常組織からmiRNA、mRNAの抽出とcDNA化を行い、realtimePCRにて測定し、その発現と臨床病理学的因子の検討を行った。大腸癌組織Clinical sampleにおける発現解析では、転移抑制遺伝子として知られているKiSS1発現低下が、リンパ節転移と有意な相関(p<0.01)を示し、生存率の低下(p<0.001)を認めた。多変量解析でもKiSS1低発現が独立予後規定因子を示し、Logistic Regressionanalysisでは、KiSS1低発現はリンパ節転移独立規定因子を示した。大腸癌組織におけるKiSS1低発現は、肺転移ではないもののリンパ節転移に関与している可能性が示唆された。また、大腸癌組織におけるTrkB高発現が予後を規定し、TrkBが上皮間葉移行に関与し、癌進展に関与することを、clinical sampleとcell lineを用いたin vitroにて証明し、遠隔転移形成のメカニズムに関与している可能性を報告した。来年度はさらに新たなtargetの検索、microRNA解析、メチル化解析を含め、鋭意、実験を計画的に進め、国内外の学会や論文等で精力的に発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにいくつかの遺伝子発現解析においては有意なデータを認めており、これを報告している。またmicro RNA、DNAメチル化などの解析はすでにcinical sampleからのmicro RNAの抽出も終了しており、今年度、さらなる解析を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に抽出し終えたmicro RNAの解析を中心にメチル化解析、遺伝子発現解析を並行して進め、あらたなtargetを検索し、そのvitro, vivoでの証明を鋭意進めていく。 また、肺転移高発現株作成に関しては、手技的にもcontaminationのリスクと生着率の低さが問題となっており、今年度、鋭意、実験を進めていく必要がある。
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