腹腔内アルブミン連日注入により作成した尿蛋白モデルを用いた検討で、非肥満若年マウスに比し、肥満及び24ヵ月齢(加齢)マウスでは、尿蛋白による腎尿細管病変が顕著に増悪した。そこで、これら4群の摘出腎から作成したcDNAを用いDNA Microarray行った結果、肥満と加齢に共通した尿細管病変増悪関連遺伝子として57遺伝子のスクリーニングに成功した。その中で、9遺伝子に関しては腎疾患との関連は報告されていなかったため、培養近位尿細管細胞を用いこれら9遺伝子の機能解析を行った。候補遺伝子9遺伝子の過剰発現レトロウイルスならびにsiRNAを作製し、培養近位尿細管細胞に感染、遺伝子導入し、尿蛋白刺激により惹起される細胞障害に対し各遺伝子の発現変化が及ぼす影響を検討した。結果、9遺伝子中の1遺伝子、GeneXの発現変化が細胞障害に影響を及ぼすことが明らかとなり、GeneX遺伝子が肥満や加齢による尿蛋白関連尿細管障害の増悪に関わる新規遺伝子である可能性が示された。近位尿細管特異的Inmt欠損マウスならびに過剰発現マウスの作製に成功し、今後病態モデルにおける解析を予定している。肥満や加齢が発症進展に大きく影響を及ぼす糖尿病性腎症症例コホートにおけるSNPs解析を行ったが、GeneX遺伝子内に慢性腎臓病の代表的疾患である糖尿病性腎症のリスクalleleは存在し得なかった。
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