本研究は、わが国の子宮がんリスク集団である中高年女性の約7割を占める就労女性を対象に、子宮がんに関する知識、受診行動および未受診理由に関する調査を行い、子宮頸がん検診未受診に関連する要因を明らかにするとともに、効果的な子宮頸がん検診包括的啓発プログラムを開発することを目的としている。 一企業(121事業所)に勤務する20~60歳代の女性、約5000名を対象とし、同意の得られた対象者に、定期健康診断時に子宮頚がん検診受診行動、子宮がんに関する知識、自己リスク認識等についての自記式調査を実施した。自記式調査票は4413名から回収できた(回答率92.1%)。本研究の分析対象者は3749名(85.0%)であった。このうち、子宮がん検診を過去に一度でも受診したことがあると回答した者は2080名(55.5%)、受診したことがないと回答した者は1669名(44.5%)であった。子宮がん検診受診経験率は年齢、配偶者の有無、出産経験の有無、月経の有無等と関連していた。子宮頸がん検診未受診理由は「特に自覚症状もなく健康だから」「内診が嫌だから」「男性医師が嫌だから」などが多かった。年代別でみると「特に自覚症状もなく健康だから」はどの年代でも50%を超えていた。「内診が嫌だから」は年代が高いほうが割合が高かった。「男性医師が嫌だから」は年代が低いほうが割合が高かった。 子宮頸がんは若年層で増えてきているため20~30歳代の若年層と、40歳以上の2群に分け、調査から抽出した未受診理由を中心に、年齢層別の受診啓発チラシを作成した。さらに「自覚症状がなくても2年に1回は子宮頸がん検診を受診しましょう」とメッセージを印刷したクリアホルダーを作成した。これらは近隣の自治体や職域での配布を予定している。また、チラシは滋賀医科大学臨床看護学講座(成人看護学)のホームページに掲載する予定である。
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