研究課題/領域番号 |
23890092
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 格 京都大学, 医学(系)研究科, 助教 (10610454)
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キーワード | 白血病 / 中枢神経浸潤 / 免疫不全マウス |
研究概要 |
中枢神経浸潤白血病モデルの構築を目的とし患者由来のヒト白血病細胞を前処置なしで高度免疫不全マウスであるNOGマウスに移植した。骨髄、さらには髄外浸潤も再現したヒト白血病化NOGマウスが再現できたため、このマウスの中枢神経の病理解析を施行した。ヒト白血病化NOGマウスの中枢神経ではヒトにおいて白血病細胞が浸潤することが知られているVirchow-Robin spaceに白血病細胞が浸潤している病理像が得られ、ヒト白血病化NOGマウスは中枢神経浸潤も病理レベルで再現していることが確認された。このヒト白血病化NOGマウスを経時的に病理組織にて評価すると、ヒト白血病の中枢神経浸潤の経時的浸潤進展パターンを確認することができた。この様な白血病細胞の中枢神経浸潤の経時的な病理組織評価は患者体内での検討は不可能であり、マウスモデルを用いて初めて可能になった。さらには中枢神経浸潤が再現されるまで25週以上かかっており他の免疫不全マウスよりも寿命が長いNOGマウスを照射なしで移植して初めて観察し得る現象と考えられた。このヒト白血病化NOGマウスの髄液を採取しサイトスピンやFACSにて解析するとヒト白血病細胞のみが髄液中に浸潤しており、さらにはヒト白血病化NOGマウスの造影頭部MRIにて硬膜下に強い集積を認める画像が得られた。この様な多角的な解析からもヒト白血病化NOGマウスの中枢神経浸潤はヒト白血病中枢神経浸潤を忠実に再現していることが確認された。これまで報告されている白血病中枢神経浸潤のマウスモデルはセルラインを使用したモデルが多く、しばしばヒト白血病や今回のマウスモデルでは認められない両下肢マヒなどの臨床症状が観察されている。さらには放射線照射などの前処置を用いているため生理的な中枢神経浸潤の再現とは言い難く、今回我々が樹立した中枢神経浸潤を伴うヒト白血病化NOGマウスはヒト白血病の中枢神経浸潤を解析するにあたって非常に有用な系だと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成23年度計画は中枢神経浸潤白血病モデルの構築と、そのモデルを用いた中枢神経浸潤や再発に関わる因子の同定であった。この全ては達成していないが、白血病中枢神経浸潤モデルが構築され、モデルを利用した因子解析などは進んでいるため、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今回構築した白血病中枢神経浸潤モデルを用いて、従来の計画に従い中枢神経浸潤した白血病細胞に特徴的な因子の同定と特徴的因子の機能評価、さらにはヒト白血病マウスにおける治療モデルを作成し、臨床応用可能な特定因子をターゲットとした治療基盤の作成を目指す。
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