研究課題
本研究により、我々は炎症性貧血の原因遺伝子Hepcidineの発現について、炎症性サイトカインIL-6による発現誘導と、BMPによるそれを比較した。これにより、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構の一つであるコアヒストンの化学修飾について、IL-6刺激時にHepcidineプロモーター上で特異的に変動するものを見出した。そこで我々はさらに、過去の報告等を基に、この修飾変化を直接触媒し得る酵素の絞り込みを行い、RNAi法によりこれらをコードする遺伝子の機能阻害を行い、この責任遺伝子の同定を試みた。現在までに候補として挙げた8遺伝子について、それぞれの単独の発現抑制では不十分であることが分かっている。これは類似の活性をもつ遺伝子による代償効果や、発現抑制の効果が不十分であること、また未知遺伝子が寄与する可能性などが考えられる。この解決策として、複数遺伝子の同時ノックダウン、近年その実用化が注目されているZFN,TALENおよびCRISPRといった遺伝子改変技術の応用、shRNAライブラリーによる網羅的な遺伝子機能阻害による解析などを検討した。一方、我々は同時に慢性炎症に伴う疾患の一つとして、炎症からの発癌に着目し、多くの癌で見られるエピジェネティックな異常である、ゲノムワイドなDNAの低メチル化の誘導について、その分子メカニズムと炎症性サイトカインの寄与の解明にアプローチした。この成果として、我々は炎症性サイトカインの作用によるDNA脱メチル化機構を説明する新たなモデルを提示することに成功した。本成果は、現在、FEBS Letterに投稿後、査読者の指摘に従い改訂し、再投稿済みである。
すべて 2013
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Blochim Biophys Acta
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