嫌気性インキュベーター内で独自に改良を加えたmodified Robbins device (MRD) およびペリスタポンプを用い、MRD中に唾液処理を行ったハイドロキシアパタイト (HA) ディスクを填入し、HAディスク上にPorphyromonas gingivalis のバイオフィルムを作製し、作製されたバイオフィルムにAZMをsub-MICを含む濃度で添加した。Sub-MICのAZM添加/非添加時のバイオフィルム遊離細胞に対する薬剤抵抗性獲得の有無について、微量液体培地希釈法 (小酒井ら、日本化学療法学会雑誌 27、559-61、1979) を用いてMIC測定を行い確認した。その結果、sub-MIC AZM曝露群のMICは非曝露群より上昇しておらず、sub-MIC の AZM 曝露により AZM に対し耐性の獲得を認めなかった。また、同様の手法を用いて同じマクロライド系抗菌薬であるエリスロマイシン(EM) に対するMICも測定し、交差耐性発現の有無についても検討を行った結果、AZM の結果同様、EMに対しても耐性の獲得は認めなかった。 前項の方法を用いてバイオフィルムを作製し、AZM添加群および非添加のコントロール群について、菌体よりタンパクを精製し、二次元電気泳動システムを用いて分離後、AZM添加/非添加でタンパクの発現量について検討したところ、381株、HW24D1株およびW83株において、浮遊細菌とバイオフィルム遊離細胞の50および110kDa付近のタンパク発現量に差が認められた。これらのタンパクについてLC-MS/MSを用いた質量解析を行ったところ、分子量が約50kDaのタンパクはグルタミン酸脱水素酵素(gdh)およびヘマグルチニンタンパク(HagE)であり、約110kDaのタンパクはRagAタンパクであることが明らかとなった。
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