(目的)タンパク質のS-パルミトイル化とS-ニトロシル化が同一システイン残基を修飾する可能性に着目し、S-ニトロシル化修飾がS-パルミトイル化修飾を直接阻害することでタンパク質の機能を制御し、細胞内情報伝達を変化させることを仮定し検証する。 (研究実績)細胞モデルとしてRAW264.7マクロファージ細胞を使用し、LPS/IFNγ刺激によりiNOSの発現を誘導させることで、継続的に大量のNOを産生させた。この時iNOS特異的阻害薬である1400wを使用し、NO産生の有無の条件を作り出した。NOの産生は細胞培養液をSaville assayに供することで確認し、目的とする条件を作り出していることを確認した。次にこれらの条件下で培養した細胞の全分画をAcyl-RAC(パルミトイル化タンパク質の検出法)によりNO産生条件下においてパルミトイル化タンパク質が低下するかを確認したところ、NO存在下において明らかな違いは検出できなかった。これは、NOの有無に関わらず、多量のパルミトイル化タンパク質が検出されるために、NOの効果がマスクされてしまっていると考えられた。一方で、SNO-RAC(ニトロシル化タンパク質の検出法)に供したサンプルでは、予想通りニトロシル化タンパク質が上昇していることを確認した。しかしながら、これらの条件検討を行っている過程で、各翻訳後修飾の同定法に大きな検出感度の違いがあることが判明した。Acyl-RAC法によるパルミトイル化タンパク質の検出過程において、パルミトイル化修飾自体が比較的安定的であり、また、中性ヒドロキシルアミンによるパルミトイル化修飾の還元効率が大変高いのに比較して、SNO-RAC法によるニトロシル化タンパク質の検出過程においては、ニトロシル化タンパク質自体の不安定性に加えて、アスコルビン酸によるニトロシル化修飾の還元効率の低さが判明した。そこで、アスコルビン酸の濃度と反応時間を最適化し、SNO-RAC法の検出感度を大幅に上昇させた。
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