研究課題/領域番号 |
23890114
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐々木 弘智 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20610736)
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キーワード | 1型糖尿病 / インクレチン / CFA / 妊娠 / NOD^<Rheb>マウス / 膵β細胞量 |
研究概要 |
RhebによるmTORC1経路活性化による膵β細胞量の増加がT1D発症を抑制させるという仮説に基づいた研究では、予測に反して、膵β細胞量増加をきたすNOD^<Rheb>マウスは、T1D発症を促進させた。機序としては、Rheb依存性mTORC1経路活性化による膵β細胞量の増加がむしろ自己抗原としての内因性インスリンに対する免疫反応を増強させたと考えている。そこで、膵島再生が期待されるインクレチンなどを用いて、糖尿病発症直後のNOD^<Rheb>マウス及びNODマウスへの投与により膵島の再生などを通じて糖尿病の改善が得られるかどうかを検討した。また、妊娠中には膵β細胞量増加を認めることより、膵β細胞量増加と自己免疫促進をきたすNOD^<Rheb>マウスは、妊娠中や出産後の発症促進の有無を検討し、妊娠に関連した1型糖尿病のモデルになりうるかどうかを検討した。 (1)糖尿病発症直後のNOD^<Rheb>マウス及びNODマウスへのインクレチン投与 膵島の再生を期待した糖尿病発症直後のリラグリチドの単独投与では、NODマウスでは糖尿病の改善効果を認めるものの、NOD^<Rheb>マウス(R3:発症促進)ではほとんど糖尿病の改善を認めず糖尿病状態からの改善は困難であることが示唆された。さらにリラグリチドとCFAとの併用投与では、現在まですべてのNODマウスで糖尿病が改善した。一方、NOD^<Rheb>マウスではほとんど糖尿病の改善を認めず糖尿病状態からの改善は困難である可能性が示唆され、糖尿病状態からの改善を誘導するような制御性Tregや膵島の再生は認めていない。今後さらに検討していく予定である。 (2)NOD^<Rheb>マウスの周産期における糖尿病発症促進の有無の検討 NOD^<Rheb>マウスでは、NODマウスと比較して出産1カ月以内の糖尿病発症を顕著に認め、かつ出産回数が少ない。また、NOD^<Rheb>マウスの自然発症の推移と比較しても糖尿病発症の促進傾向を認めており、今後さらに検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NOD^<Rheb>マウスは、雄性NODマウスと雌性NOD^<Rheb>マウスの交配により、wildタイプ(NODマウス)とnon-wildタイプを識別する必要がある。さらに、糖尿病発症が促進されるマウスでもあるため系統維持のためのマウスを確保しつつ実験に使用しているため、マウスの数に制限があり実験の進行がやや遅れる結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
雌性NOD^<Rheb>マウスでの実験に使用可能なマウスの割合をもうすこし増やすことで、1型糖尿病発症直後の糖尿病改善実験と妊娠関連1型糖尿病発症実験をともに推進していきたい、と考えている。
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