RhebによるmTORC1経路活性化による膵β細胞量の増加がT1D発症を抑制させるという仮説に基づいた先行研究では、予測に反して、膵β細胞量増加をきたすNODRhebマウスは、T1D発症を促進させた。機序として、Rheb依存性mTORC1経路活性化による膵β細胞量の増加がむしろ自己抗原としての内因性インスリンへの免疫反応を増強させたことが示唆された。本研究では、膵島再生が期待されるインクレチンなどを用いて、糖尿病発症直後のNODRhebマウス及びNODマウスへの投与により糖尿病の改善が得られるかどうかを検討した。また、妊娠中にはβ細胞量増加を認めることより、膵β細胞量増加と自己免疫促進をきたすNODRhebマウスが妊娠に関連した1型糖尿病のモデルになりうるかどうかを検討した。 ①糖尿病発症直後のNODRhebマウス及びNODマウスへのインクレチン投与 膵島の再生を期待した糖尿病発症直後のリラグリチドの単独投与では、NODマウスでは糖尿病の改善効果を認めたものの、NODRhebマウス(R3:発症促進)ではほとんど糖尿病の改善を認めず糖尿病状態からの改善は困難であることが示唆された。さらにリラグリチドとCFAとの併用投与では、現在まですべてのNODマウスで糖尿病が改善した。一方、NODRhebマウスでは、糖尿病からの改善をきたす制御性Tregの誘導や膵島の再生は認めず、検討した限りでは糖尿病の改善を認めていない。 ②NODRhebマウスの周産期における糖尿病発症促進の有無の検討 NODRhebマウスでは、NODマウスと比較して出産1カ月以内の糖尿病発症を顕著に認め、かつ出産回数が少ない。また、NODRhebマウスの自然発症の推移と比較しても糖尿病発症の促進傾向を認めた。
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