PRL-3は様々な種類の癌において発現が上昇し,リンパ節転移との関連について報告されているが,本研究では,正常粘膜上皮と比較して上皮異形成および口腔扁平上皮癌ではPRL-3の発現上昇を認めたことからPRL-3は癌化に関与すると考えられた。また,高分化型口腔扁平上皮癌症例および組織学的浸潤度を示すYK分類にて比較的浸潤度の低い1,2,3型の症例においてPRL-3の発現上昇を認めた。また,PRL-3の発現と分化マーカーであるCK17の発現の間に正の相関関係を認めた。一方では,PRL-3の発現とStage分類や頸部リンパ節転移との間には関連は認められず,このことは多くの他の癌種でみられる浸潤・転移に関与するというPRL-3の機能とは大きく異なり,口腔扁平上皮癌においては癌の浸潤・転移よりむしろ癌の分化に関与する特徴的な役割を果たすことが示唆された。さらに,癌化過程でのPRL-3の関与がヒト材料で示されたため,動物における化学発癌モデルにて検討を行ったところ,4NQO誘導ラット舌癌モデルでも上皮異形成ならびに扁平上皮癌組織においてPRL-3の発現上昇傾向が認められ,PRL-3は癌化に関与することが示唆された。
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