研究概要 |
肺炎は,日本人の死因別死亡率の第4位である。その90%以上を占めている高齢者に多い誤嚥性肺炎は,歯周病との関係が深いと云われている。実際に,肺に感染が見られる歯周病関連細菌が細菌培養で確認されている。しかし,従来の喀痰培養法では,この起炎菌判定は難しく,また肺炎発症リスクの定量的評価法は確立されていない。これまでの研究から,歯周病細菌に対する末梢血IgG抗体価は,誤嚥性肺炎の病態形成との関連性が考えられ,リスク診断に有用かもしれない。そこで,本研究では,不顕性誤嚥性肺炎発症のリスク判定や予知システムの確立を目指すことを目的として,高齢者における肺炎の重症度と口腔内感染度の関連性について調査し,歯周病原細菌に対する血中IgG抗体価が細菌性肺炎起因菌の感染指標となりうるかどうかについて検討することとした。昨年度は,まず,岡山大学倫理委員会に倫理審査を申請して承認を得た。続いて,鳥取市立病院倫理委員会に倫理審査を申請して承認を得た。倫理審査の申請と並行して,患者の臨床データ(口腔および全身状態)を整理するためのコンピュータデータベースを構築した。現在、肺炎罹患患者に対して,肺炎発症時および肺炎治療後における全身臨床検査および口腔内診査項目について調べ,口腔内歯周病細菌数を定量するための口腔内のプラークと唾液,さらに歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価測定用血清の採集を実施している。現在収集している15名のサンプルから,肺炎罹患患者において,肺炎重症度分類の指標である肺炎血液尿素窒素(BUN)値が高値であるほど歯周病が重度である傾向にあった。今後,サンプル数を増やして解析を進めることによって,誤嚥性肺炎と歯周病の関連性が明確になる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,全身臨床検査および口腔診査項目データの収集に加えて,血清抗体価測定用血清の採集を予定していた。これらの項目に加えて,口腔内の歯周病細菌量を定量するために,口腔内のプラークおよび唾液を採取することとした。引き続き,研究対象者の全身および口腔状態に関する情報収集および試料採集を進めていく。研究対象者の口腔内のプラークおよび唾液サンプルおよび血清サンプルが50名に達した段階で,歯周病原細菌に対する血清IgG抗体価の測定を随時行う。
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