研究概要 |
歯周治療後の歯肉上皮ダウングロースのメカニズム解明には,歯周炎による骨欠損を有するマウスの歯周外科治療後の創傷治癒モデルを確立することが必須である。本年度申請者は,当初の機械的削合によるマウス骨欠損モデルから,歯周病原細菌Porphyromonus gingivalisを用いたマウス歯周炎モデルを作製する計画に変更し,より歯周病態を反映した実験系の確立に成功した。 (1)K14-Smad2マウス(TG)と野生型(WT)を用いて上記歯周炎モデルを作製し,computed tomography (CT)とHE染色で上顎左側大臼歯部に歯槽骨欠損を確認した。 (2)CTでは,大臼歯の歯根の2分の1以上に及ぶ根分岐部病変を伴う歯槽骨吸収が存在した。また,HE染色では,歯槽骨欠損部に炎症性の細胞浸潤を確認した。 (3)現時点でのマウス歯周炎モデルの作製には,煩雑な操作が必要であり,その作製期間も長期に渡るため,より簡便に短期間で作製する方法を検討中である。 今後は,マウス歯周炎モデルにおける歯周外科治療後の歯槽骨欠損部への上皮のダウングロースをWTとTGとで組織学的に経時的に比較をする。さらに,ダウングロースが開始してから終了するまでの上皮組織を採取して.研究実施計画に従い,遺伝子マイクロアレイ解析およびリアルタイムPCR解析を行うことによって,創傷治癒において変化する増殖,遊走,および接着に関与する遺伝子を同定する。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進行状況はやや遅れているが,約1ヵ月後にはマウスの歯周炎モデルのプロトコルが確立する。その後の実験手法は,申請者の所属する研究室において数多く行っているため,滞りなく進行すると考える。また,平成24年度は,平成23年度の研究計画が予定通りに進まない可能性を考慮して計画を立案したため,若干の余裕はある。
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