歯周組織再生療法おいて,歯根膜,歯槽骨,セメント質といった間葉系組織の再生を促進することは重要である。さらに,これらの組織再生の場を確保するために,歯肉上皮の歯根面に沿ったダウングロースを抑制することは,治療を成功させるうえで大変重要である。しかし,近年の歯周組織再生療法の研究は,間葉系細胞の増殖を目的としたサイトカイン療法が主であり,歯肉上皮の増殖制御を目的とした研究報告は殆ど無い。 我々の研究ではSmad2遺伝子を上皮細胞特異的に強制発現する遺伝子改変マウス(K14-Smad2 transgenic mice:TG)の口蓋歯肉から分離・培養した上皮細胞において,増殖能および遊走能を調べ,TGの上皮細胞の増殖能および遊走能は,野生型マウス(WT)の上皮細胞と比較して,有意に低下していることを報告した。 今回,WTおよびTGの歯槽骨に骨欠損を作製し,HE染色を行った組織切片を用いて経時的な歯槽骨内への歯肉上皮のダウングロースを比較することが第一の目的であった。そこで,交付申請書には歯の周囲の歯槽骨をラウンドバーを使用して切削して,機械的に骨欠損を作製する方法を記載した。しかし,その方法は感染による歯周組織への影響が無いために,今後の実験結果に大きく影響を与えると考え,Porphyromonus gingivalis(Pg)を感染させた歯周炎マウスモデルを作成することに変更をした。その結果,Pgを感染させたマウスとコントロール用のマウスの歯槽骨をCTで確認をしたところ,Pgを感染させたマウスにおいて著明な歯槽骨吸収があった。また,WTとTGともに歯周炎マウスモデルの作成に成功した。 しかし,歯周炎マウスモデルの作成に多くの時間を費やしたたこと,またTGの出産数が激減したことで期間内に予定していた実験ができず,現在進行中である。
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