研究課題/領域番号 |
23890129
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
秋田 智之 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特任助教 (80609925)
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キーワード | 肝癌 / 年齢・時代・コホートモデル / 肝炎ウイルスキャリア率 / 数理疫学 |
研究概要 |
本年度は肝癌死亡率予測のための現状分析を行うことを予定して、以下のような解析を行った。 1)年齢・時代モデルによる解析 性・年齢階級別肝がん死亡率の長期間データを年齢効果(加齢によるリスク)、時代効果(年齢にかかわらず、その時代の構成員全員が受けたリスク)に分解した。分析はOhtaki(1990)の方法を用いた。 2)年齢・時代・コホート(APC)モデルによる解析 1)の肝癌死亡率を年齢効果、時代効果およびコホート効果(生まれ育った時代環境を反映し、同一期間に出生した集団が共通して受けたリスク)に分解した。このモデルには各効果が一意に求まらない識別問題があるため、それぞれの効果はIRWLS法による最適化により推定した。また、分解の妥当性を検討するために、推定された各効果からAPCモデルの基づく死亡率を再現した。再現推定死亡率は実死亡率と類似がみられ、再現性は高く、このモデルにより将来予測が可能であることが示唆された。 3)CarstensenのAPCモデル・中村のベイズ型APCモデルによる解析 識別問題に対応した方法としてCarstensen(2007)の方法、中村のベイズ型APCモデル(1982)による解析も行った。2と同様に高い再現性が得られた。 4)年齢・時代・肝炎ウイルスキャリア率モデルによる解析 コホート効果と関連していると考えられる肝炎ウイルスキャリア率をコホート効果の代わりにモデルに取り込んだ年齢・時代・キャリア率モデルによる解析を行った。再現性は2・3と向様に高く、男性ではコホート効果とキャリア率によるリスクに高い相関がみられた。女性では相関はあまり高くなかったものの、死因を「肝癌と肝硬変」にすると同様に高い相関関係がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では肝炎ウイルスキャリア率など病因をモデルに組み込むことは次年度に行う予定であったが、今年度に簡単な試作モデルによる解析を行った。また、当初はベイズ型APCモデルとしてSchmidの方法、交互作用モデルによる解析を予定していたが、ベイズモデルとして中村の方法に変更したこと、これらのモデルの再現性が高かったため、交互作用モデルによる解析は行わなかったことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の4のコホート効果と肝炎ウイルスキャリア率について引き続き関運性を検討する。具体的には、現在のモデルでは肝炎ウイルスキャリア率によるリスクはHBs抗原陽性率とHCV抗体陽性率の一次結合で与えているが、他の多項式や非線形関数に置き換え、情報量規準などにより比較・確認する。また、キャリア率のデータを大規模な研究のものに変更する、他の病因や輸血用血液スクリーニングなどの社会状態などの要因をモデルに取り入れることも考えている。さらにベイズ型モデルや交互作用モデルと今回の解析で用いたAPC、年齢・時代・キャリア率モデルによる将来の肝癌死亡者数の予測を行う。
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