研究課題/領域番号 |
23890130
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
永野 義人 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特任助教 (50397973)
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キーワード | アルツハイマー病 / ESCRT経路 / HDAC6 |
研究概要 |
本年度はmultivesicular body(MVB)を形成するアルツハイマー病モデル細胞の確立を行い、MVB肥大化の機序を細胞生物学的に解明する目的で以下のとおり研究を実施した。 1.MVBを形成するアルツハイマー病モデル細胞の確立について a)Amyloid β precursor protein(APP)発現N2a細胞(野生型、変異型)を用いてMVB形成を観察した。MVBのマーカーとしてCD63を用いたが染色性を認めなかった。 b)タウ遺伝子導入細胞におけるMVB形成の観察を行った。野生型タウとMTBRドメインのみの変異型タウをそれぞれ導入した細胞を観察したがMVB様のCD63陽性構造物は認めなかった。 以上のことからMVBはAPPもしくはタウ単独で形成されるものではなく、他の因子と関連して形成される可能性がある。 c)CHMP2B発現細胞におけるMVB形成についても観察行った。変異型CHMP2Bを導入した細胞では非常にユニークなCD63陽性のチューブ様構造物を認めた。CHMP2BはMVBのマーカーとなる蛋白でもあり、この構造物のMVB形成との関わりも興味深いと考えている。 2.MVBの肥大化についてはHDAC6が関与すると考えている。我々はParkinson病モデル細胞においてHDAC阻害薬であるTSAでその細胞を処理するとvesicle形成が促進されることを観察している。また生化学的実験においてCHMP2BとHDAC6が結合することを示しており、両者がMVB肥大化に関わる可能性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに予定していたMVBを形成するアルツハイマー病モデル細胞の確立が終了していないため、その後の研究が進んでいない。生化学的な解析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアルツハイマー病モデル細胞を確立すべく、前述のAPP発現細胞、タウ遺伝子導入細胞を利用し、TSA処理やHDAC6、CHMP2Bをノックダウンした状態でのMVB形成を観察する。またこれまでの報告でvesicleやautophagosomeの肥大化に関わる蛋白がいくつか同定されており、我々のパーキンソン病モデル細胞でもその蛋白をノックダウンするとvesicleの肥大化が観察される。まずはそのようなMVB形成・肥大化に関わる可能性のある他の因子を網羅的に解析する。
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