アルツハイマー病患者の脳に認めるGranulovacuolar degeneration(GVD)は、蛋白凝集体形成やautophagyに深く関わるHDAC6の抗体で染色されることを見出した。我々の研究室ではESCRTファミリーの一つであるCHMP2BがGVDで強く染色されることを報告しており(Yamazaki et al. PLoS One 2011)、HDAC6がGVD形成に関わっている可能性が示唆された。 また、CHMP2Bは前頭側頭葉型認知症の原因遺伝子であり、その疾患関連変異が報告されている。野生型、変異型CHMP2Bを培養細胞に遺伝子導入すると、それぞれ特徴的な凝集体を形成し、GVDのマーカーの一つであるCD63が陽性となる。これがGVD形成のモデル細胞となる可能性を見出している。 培養細胞を用いた免疫沈降法にてCHMP2BはHDAC6と結合した。HDAC6は脱アセチル化酵素の一つで、CHMP2Bを脱アセチル化しその機能を調節する可能性があり、さらに解析を進めている。 今後、HDAC6とESCRT familyの関連を生化学的、細胞生物学的に解析を進めていき、GVD形成にどのような役割をそれぞれしているのか、またアルツハイマー病の治療ターゲットとなりうるのかをさらに解析する予定である。
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