研究課題/領域番号 |
23890132
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石山 宏平 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (50437589)
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キーワード | 膵島移植 / NK細胞 / 肝臓免疫 |
研究概要 |
膵島移植後のグラフト生着率が不良である原因を「膵島が移植される肝臓の特殊な免疫環境のため」と仮説を立て、膵島を肝臓内に移植することで膵島グラフトに対するレシピエント肝臓内Natural Killer (NK)細胞の細胞傷害活性が増強し、グラフト傷害が誘導されることをマウスモデルで証明した。本研究は、膵島移植の成績向上のために、膵島グラフトに対する肝臓内NK細胞の細胞傷害活性を抑制するための新しい免疫抑制療法の開発を目的とする。 平成23年度研究計画 1.NK細胞の細胞傷害活性抑制シグナルを増強する因子の検討 免疫細胞の活性を抑制する生理活性物質のNK細胞に対する影響を検討するために、Concanavalin A刺激によるリンパ球幼若化反応を、生理活性物質であるPGE2、TGF-βで抑制できるかフローサイトメトリーを用いて検討した。PGE2、TGF-β存在下にNK細胞の分裂増殖と同時に、活性化分子であるCD69や細胞傷害分子であるTRAILの表出が抑制されていたことから、活性化NK細胞が生理活性物質によって制御できる可能性が示唆された。これを踏まえ、様々な生理活性物質を効率よく持続的に産生すると報告されている間葉系幹細胞を用いた活性化NK細胞の抑制効果についても検討を開始している。 2.抑制因子刺激NK細胞の膵島に対する細胞傷害活性抑制効果の確認 膵島への細胞傷害活性を検討する前に、IL-2やIL-12などの炎症性サイトカインで活性化されたNK細胞の細胞傷害活性が生理活性物質によって抑制されるか検討した。結果として、サイトカイン刺激肝臓内NK細胞の活性が間葉系幹細胞との共培養下で抑制されることをフローサイトメトリーで確認できた。同時に、培養上清を保存しており、サイトカイン、ケモカイン濃度を測定して主要な抑制因子を同定する。また、膵島に対する細胞傷害活性を検討するためのアッセイの確立中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NK細胞の細胞傷害活性を抑制する可能性のある生理活性物質の検討を引き続き行っているが、臨床に応用する際の効率性の向上、持続性を考慮して、間葉系幹細胞を用いた活性化NK細胞抑制効果の検討も始めた。これにより、効率的なNK細胞の活性抑制が期待できることが判明した。今後は、この間葉系幹細胞が産生する生理活性物質、ケモカインの解析を本研究と並行して行うことで、効率よくNK細胞活性抑制に重要な因子の検討が可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
生理活性物質による活性化NK細胞抑制効果があることが、今までの研究期間で明らかとなった。今後は、この抑制効果が効率よく確実に得られるための検討を行うと同時に、in vivoでの実験を早急に開始する予定である。また、NK細胞を含めた免疫細胞に対する抑制効果が報告されている間葉系幹細胞を用いることで、抑制効果の向上を図り、どのような液性因子が活性抑制に影響しているかを効率よく検証することが可能になると考えている。最終印には、本研究での計画通りに、抑制因子による移植膵島グラフトの生着延長効果について確認していく予定である。
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