膵島移植は膵臓移植に比べて非侵襲的である反面、グラフト生着率は5年で10%以下と不良であり早急な改善が求められている。原因として移植時の膵島機能低下、移植直後の膵島グラフトへの血流障害等が考えられるが、申請者は、膵島が移植される肝臓が有する特殊な免疫環境が影響していると仮説を立てた。これまでに、膵島を肝臓内に移植することで膵島グラフトに対するレシピエント肝臓内Natural Killer(NK)細胞の細胞傷害活性が増強し、グラフトの機能障害が誘導されることをマウスモデルで証明した。本研究では、臨床膵島移植の成績向上のために膵島グラフトに対する肝臓内NK細胞の細胞傷害活性を抑制するための新しい免疫抑制療法の開発を目的とする。 H23年度に、間葉系幹細胞(MSC)によりIL-2刺激NK細胞の活性化が抑制されることを確認できたことから、H24年度は、MSCによるNK細胞細胞傷害活性抑制効果のメカニズム解析を中心として行ってきた。MSCが産生する抑制因子に注目し、肝臓内NK細胞抑制効果の確認を行うこととした。NK細胞抑制因子として、TGF-β、PGE2を同定し、活性化NK細胞の細胞傷害分子(TRAIL)や活性化マーカーの表出がこれらの因子により抑制されることを確認した。また、これらの抑制因子によりNK細胞の細胞傷害活性が抑制されることを細胞傷害性試験で確認した。
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