研究課題/領域番号 |
23890136
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉岡 基子 広島大学, 病院, 歯科診療医 (00612003)
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キーワード | 顎骨由来MSCs / 口唇裂・口蓋裂 / 骨再生 |
研究概要 |
本年度は、口唇裂・口蓋裂における顎裂部に対して、より低侵襲に顎骨欠損部の骨再生を行う目的で、以下のとおり実施した。 顎骨骨髄から、低侵襲に、かつ、安定した量の未分化間葉系幹細胞(以下MSCs)を回収するために、骨髄採取手技および、MSCs培養方法の確立を行った。腸骨に比して、形態的に薄い顎骨から採取できる骨髄液の量は非常に少なく、さらに、骨髄液中のMSCs存在率も低い。そのため、移植用細胞の初期培養成功率も低下する。そこでまず、顎骨からの骨髄採取場所、採取方法および培養手技についての徹底した検討を、ビーグル犬を用いて行う必要があった。骨髄採取に使用するツールから、培養液に至るまで、再検討を行った結果、使用するツールの素材を主に変更することで、骨髄液が効率よく確実に採取可能となった。また、細胞の初期培養時に使用する培養液の種類を変更し、従来の手技に若干の変更を加えることで、安定した細胞培養が行えるようになった。 同じ骨髄由来MSCsでも、腸骨由来と顎骨由来とでは、採取時から培養に至るまで同一の手法では扱えないことが、本年度の研究遂行の妨げとなった。しかしながら、顎骨骨髄からの安定したMSCsの単離・培養手技を確立できたことは、今後の研究にとって、大きな利益となった。 採取、初期培養時の細胞の取扱いに関する違いを除けば、腸骨骨髄由来MSCsと比して、その後の細胞増殖能や骨芽細胞分化能に顕著な違いは確認されなかった。また、初期培養時以外の培養では、接着性に関して、腸骨由来・顎骨由来両者の間に違いはまったく認められなかった。 当初計画していた研究計画どおりの進行状況とはいかなかったが、今後の研究を円滑に実施していくためにも、本年度の研究成果は非常に大きいと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、炭酸アパタイト担体上での細胞の挙動や、破骨細胞との関連性についての検討まで、進めることができなかった。顎骨骨髄から安定した骨髄の採取と、細胞の初期培養が困難であったためと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、炭酸アパタイト担体上への接着性や増殖能について検討を行ったうえで、大きな疑問点である、炭酸アパタイト担体の吸収機構へのMSCsの関与について検証していく。顎骨骨髄由来MSCsが造血幹細胞におよぼす影響について検討を行う。さらに、ビーグル犬口蓋裂モデルを用いて、顎骨骨髄由来MSCsの移植についてin vivoでの検討も行う。
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