Notchは隣接細胞同士のシグナル伝達により分化、遊走、細胞死など幅広い細胞機能を制御する細胞膜受容体である。1-4のホモローグのうち、Notch3は血管壁細胞(平滑筋・ペリサイト)に特異的に発現しており、その遺伝子変異により全身性の血管障害を伴う脳小血管疾患(CADASIL)を発症することが知られている。近年、Notch3の欠損または変異により血管新生の障害が起きている可能性が示唆されている。そこで、本研究では壁細胞の機能と動態に着目して、Notch3が虚血および低酸素条件下での血管新生を制御する機序を解明することを目的とした。 H23年度はヒトNotch3トラシスジェニックマウスの購入と繁殖を行い、近交系の樹立を行った。産仔(育成)数は約5-7匹で、野生型・変異型共に出産直後、3週齢、8週齢、24週齢時点で明らかな外見的、行動牽的異常は認められなかった。また、母マウスによる仔の食殺がたびたび見られたが、個体差によるもので、野生型、変異型間では発生頻度の違いはなかった。トランスジェニックの繁殖と並行して、C57BL/6マウスの下行大動脈から採取した血管平滑筋初代培養細胞のNotch3をノックダウンしてinvitroの実験を行った。初代血管平滑筋細胞にコントロールsiRNA及びNotch3siRNAをAmaxaNucleofectorを用いて導入し、細胞動態や低酸素培養に対する反応性の違いを評価した。現在のところ、コントロール群では低酸素培養によりNotch3の発現がわずかに増加すること、Notch3のノックダウンにより細胞増殖速度に変化が見られることが確認された。
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