研究概要 |
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療をより効果的に行うために、OSASに随伴するいびき音の音響分析法を開発し、これを用いて睡眠中の気道の狭窄部位を診断する方法を確立し、さらに口腔内装置(OA)の作用機序を明らかにすることを目的とした。 いびきは聴覚的に振動型いびきと狭窄型いびきにわけられ、振動型いびきは、軟口蓋を音源とするいびきで基本周波数は150Hz以下で、比較的正確な周期が保たれる。これに対し狭窄型いびきは、舌根沈下や扁桃肥大などの狭窄した空間を空気が無理やり通過する際に起こるいびきであり、基本周波数は500Hz程度で、不規則な周波が特徴であることが分かった。 また、OAの作用機序を明らかにするために、今年度およびそれ以前に採取できているCTデータをもとに、OA治療前後の体積・断面積を比較したところ、半固定型OAではPNS後方部で気道の断面積が増大している(n=11,P=0.016)のに対して、固定型OAでは舌根部付近で断面積が増大している(n=9,P=0.008)ことが分かった。次に流体解析ソフト(FLUENT ANSYS14.0, ANSYS)を用いて、気道の流体学的検討を行ったところ、OA装着前の気道では舌根部レベルと軟口蓋レベルで気道狭窄を認め、これらの部位で気流速度が著しく増加していたが、固定型、半固定型OA装着によるそれぞれの気道拡大部で、気流速度はほぼ一定となり流体学的にも改善していることが確認できた。すなわち両装置の作用部位が異なることを明らかにした。 今後さらなるいびきの音響解析を行い、いびきの特徴を明らかにすることができれば、OSASの診断に有用な音響学的パラメータが検出できると考えられる。
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