マクロファージ等の食細胞による病原菌や外来異物の貪食は、生体防御の観点から非常に重要である。近年、貪食ターゲットの違いにより、貪食された異物の分解速度や、抗原提示に差があることが明らかとなりつつあるが、その分子機構の差異は不明な点が多い。そこで本研究では、異なる貪食ターゲットによって惹起される貪食過程と細胞内小胞輸送に関与する低分子量GTPase、Rab35の機能相関の解明を目指して以下の研究を行った。 異なる貪食ターゲットとして、前年用いた酵母由来Zymosan粒子(TLR2介在性自然免疫モデル)、C3bオプソニン化Zymosan粒子(CR介在性モデル)に加え、ポリスチレンビーズ(アポトーシス細胞の貪食モデル)、IgGオプソニン化ビーズ(FcR介在性モデル)を用い、Rab35ノックダウンマクロファージ(Rab35 KD)における貪食活性をコントロールと比較した。Rab35 KDの貪食活性は、C3b-Zymosan粒子、ポリスチレンビーズでは明らかな差が見られなかったのに対し、Zymosan粒子ではコントロールの1/3程度、IgG-ビーズでは1/2程度に抑制された。これらの貪食ターゲットによって形成される貪食小胞へのRab35の局在をGFP-Rab35を用いて観察したところ、Rab35の貪食小胞への移行と貪食活性に相関が見られた。これらの結果から、Rab35は、TLR2やFcRを介した貪食過程では、重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 この様に、異なる貪食ターゲットによって惹起される分子機構の差異を一つずつ明らかにすることは、様々な感染症や自己免疫疾患といった免疫異常の分子メカニズムの解明やこれらに対する治療法、創薬の開発に結びつく事が期待され、非常に重要である。
|