本研究の目的は、IL-23及びTh17免疫応答が腸管平滑筋収縮性に与える影響とその機序の解明であった。第一に、IL-23が腸管平滑筋収縮性またはCa2+感受性に与える影響について検討を行った。ラット回腸平滑筋組織培養法を確立した後、3日間IL-23処理した平滑筋条片の収縮性につき検討した。その結果、K+脱分極収縮反応はコントロールと比較し軽度低下したが (25.5 mN v.s. 21.6 mN)、CCh収縮は変化を認めなかった (36.3 mN v.s. 37.4 mN)。α-toxin処理脱膜下標本を作成し、CChによるCa2+感受性に与える影響を検討したところ、IL-23はCa2+感受性に影響を与えなかった。次に、Th17免疫応答において、もう一つの重要なサイトカインであるIL-17が腸管平滑筋収縮性に与える影響について、同様の実験をおこなった。結果は、コントロールと比較しK+脱分極収縮反応 (30.8 mN v.s. 15.5 mN)及びCCh収縮反応(39.9 mN v.s. 24.1 mN)は、有意に低下した。また、これらのα-toxin処理脱膜下標本を用いた検討では、IL-17はCChによるCa2+感受性の変化に影響を与えなかった (コントロール 27.3 % v.s. IL-17 26.9 %)。以上、ラット回腸平滑筋において、Th17免疫応答は電位依存性Ca2+チャネル活性化に始まるCa2+/カルモジュリン/MLCK経路に作用し、Ca2+感受性を変えずに腸管平滑筋収縮性を低下させた。しかし一方、マウスを用いた実験では、IL-17は消化管平滑筋収縮性を亢進させる結果が得られ、ラットを用いた実験結果と相反する結果となった。Th17免疫応答が消化管平滑筋収縮性に与える影響については、動物種によって異なる可能性が示唆され、今後さらなる検討が必要と考えられた
|