本研究では,患者の臨床経過をもとに,終末期を在宅で過ごす呼吸器がん・消化器がん患者のライフタイム(余命)予測指標を開発することを目的とする。そのために,独自に作成した予測項目をもとに,在宅で療養する終末期呼吸器・消化器がん患者の症状や徴候を縦断的に調査した。 対象者は12名で全員男性,平均年齢74.8±11.5歳であり,原発部位は肺が最も多く(7名),次いで大腸(3名),胃(2名)であった。12名の訪問開始日から死亡日までの平均日数は58.7±61.4(範囲6~194)日で,最期の2週間における訪問看護師による訪問回数は,死亡当日を除いて平均15.3±7.1(範囲5~28)回であり,最期の2週間から死亡当日まで閲覧可能な174回分の訪問看護記録から情報を得た。 予測項目になり得る項目として,SpO2,意識レベルなどを再確認した。例えば,SpO2値が92以下の人が,肺がん患者で死亡11日以上前,4~10日前,死亡当日~3日前に14%,57%,100%,消化器がん患者で20%,60%,80%みられた。このことは,SpO2値が92以下になると死期が極めて近いことを示唆している。また,意識レベルの「声かけに反応しない」については,肺がん患者・消化器がん患者ともに死亡11日以上前ではみられなかった。しかし,死亡4~10日前,死亡当日~3日前については,肺がん患者で43%,100%,消化器がん患者で20%,40%でみられた。このことは,肺がん患者では「声かけに反応しない」場合も死期が極めて近いことを示唆している。 これらの予測項目は,訪問看護師が患者の死期が極めて近いことを簡便に把握できるという点で有用性が高い。これらの項目によって短い余命を予測できれば,死のプロセスの説明や看取り方法の説明などのケアに生かすことが可能である。
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